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Q301 なぜ設計監理業務の委託契約を結ぶの。
「設計料はちゃんと支払うんだし、借金の証文じゃあるまいし、そんなもの印鑑など押したくない」と言われる方がまれにあるようですが、設計監理業務委託契約はどちらかの一方的な念書や、誓約書のようなものではありません。お互いにとって、設計監理料や設計期間などの約束事を忘れたり、勘違いをなくすためにも必要な取り決め事なのです。また、あなたが「委託する」ということは、信頼して設計を任せるということですから、建築家にとってはこの時点が、仕事の「はじまり」になるのです。
Q302 いつ委託契約を結ぶの。
委託契約を取り交わす時期についてはそれぞれの建築家によって異なるようですが、いきなり契約というよりも建築家が基本構想を提案し、何度か語り合い、お互いがみえてきた段階で行なうのが一般的でしょう。ただし「間取りぐらい、ちょちょっと考えてくださいよ」と気楽に言われるケ−スがありますが、「考える」ことが建築家にとって一番重要な部分であり、設計業務の中心をなすところです。それゆえに「サービスでザザッとやってみましょう」という代物ではないことを認識していただきたいものです。
Q303 業務委託契約書の内容は。
@委託業務の内容と範囲:基本計画から現場監理まで建築家が行なう仕事の内容が明記されています。
A業務の実施期間:設計期間と監理期間を取り決めます。
B業務の報酬:取り決めた設計監理料を明記します。
C業務の報酬の支払い方法:業務着手時から工事完了時までの支払い時期を明記します。建築家によって異なりますが、基本設計完了時に25〜30%、実施設計完了時に40〜50%、工事完了時に25〜30%とする設計事務所が比較的多いようです。
Q304 設計報酬の意味がわからない。また、設計料は余分な支払いだと思っているが。
すべての建物は「設計」なしでは絶対に建たないのです。言い換えれば、必ずどこかで誰かが「設計」しています。つまり、設計料という形でなくても設計に要する支払いは、あなたが必ず行っているのです。決して余分なものではありません。
Q305 設計料が高いのではないか。
高い、安いの基準は、どこに置いているのでしょう。どの建物も同じようなプレハブに設計料を支払うのであれば、私でも高いと思います。しかし、建築家が設計して、でき上がった建物の内容の質の高さとその労力を思えば、決して高いものではありません。
Q306 なぜ図面が必要なの。
建築家と建築主が、より良い住まいを目指した思いを表現し、伝達するために図面を作成します。絵画や彫刻においては、作家が創造し、自らの手によって創るので、第三者に意図を伝達する図面は必要としません。しかし、建築は多くの人々の手によって造られていくので、形や寸法を施工者に伝えるために、図面が必要となります。この実施設計の図面により、最終的な建物のコストもわかります。
Q307 基本計画とは何ですか。
基本計画とは具体的に図面化する前の建築家が行なう構想の段階をいいます。計画敷地を見て、あなたの住まいに対する考え方や、要望を聞いたうえで、建築家は自分なりに考えをめぐらしていきます。まず私たちは、どれくらいの部屋が、幾つ欲しいかとか、家の形をどうしようと考えることよりも、あなたたち家族の住まい方について共に考えたいと思っています。そのことについては、お互いに何度となく語り合うことが大切です。
Q308 基本設計とはなんですか。
基本計画がイメージの世界としたら、基本設計は具体的に基本設計図害の形にまとめるまでのことを言います。間取りや構造の種類、各部の寸法や面積、設備的に備える機能、主な使用材料や使用機器の種類と品質など予算とのバランスなどを図面を書きながら、さらに検討していきます。
Q309 実施設計とはなんですか。
基本設計によって決定した建築計画に基づき、デザインと技術の両面にわたり細部の検討を行ない、その作業の成果として実施設計にまとめる段階を言います。あなたと打ち合わせ確認したことや建築家が意図しているところを、図面という手段で語り、表現しているものです。形や寸法を施工者に伝えるだけではなくカーテン、ブラインド、照明器具や外構など工事に含んでおきたい項目や、工事範囲等を明記しています。この詳細図がないと工事見積りもおおまかになり、後々トラブルのもとにもなりかねません。あなたにとっても、施工者にとってもお互いに必要な図面となるのです。
意匠設計に関連して構造設計、電気設備設計、給排水設備設計、空調設備設計、さらに外構及び植栽設計等が検討され、その成果として、詳細図を含む各設計図がつくられます。躯体が鉄筋コンクリート造や鉄骨造等になると計算根拠を裏付ける構造計算書と各詳細図が作成されます。これらの図面を作成するには限りない精神力と体力が必要です。設計業務の中でも時間のかかるハ−ドな部分だといえます。 詳細図はいきなり作図完成されるものではありません。「納まり」と言って、縦横と交差する部分をどうやれば仕事がやりやすく、そして美しいか。また、こうすれば雨漏りや水の侵人を防げるだろうとか、その他多くのことについて、下書きやスケッチを繰り返してまとめ、製図されていきます。ひとつのことを、いくつもの図面で書き表しているため、ちょっとした変更でも書き直しが大変な作業になるわけです。
Q310 予算の考え方は。
基本設計に基づいて、建築家が工事費概算書を作成します。基本設計はあくまでも建築物の基本的なあり方を示すものですから、実施設計を行なうなかで、その構成やグレードが変われば工事費も変わります。建築規模と工事種別、内装と設備のグレードが工事金額を左右する大きな決め手になります。適材適所、バランスよく工夫して工事費の交通整理をすることが大切です。過剰な設備は、コストアップにつながりますので特に注意しましょう。
直接にかかる建築工事費だけではなく、新しく購入する椅子やテ−ブル等の置き家具の費用、設計監理料や建築完成後の登記費用等も忘れないようにリストアップしておきましょう。また、竣工後の建物を長持ちさせるためにも、日頃の保守点検が肝心です。将来的な予算組としてメンテナンス費用を積み立てておくのも大切なことではないでしょうか。