アンデコール・アデンダ
 クライアントは、古い商業ストックの再開発として、自社所有の敷地の活性化に長く取り組んでおられる。しかし、立ち退きなどの問題などで思うようには更地の確保ができない。ちょうど前に建てた「アンデコール」の商隣を更地として確保できたので、私どもは増築工事をして「アンデコール」をより活性化する方向で取り組んだ。
DCブランドやインポートブランドが、心斎橋とはひと味違ったファッションビルとして大坂ミナミに登場したのがここ「鰻谷」を中心とした地域である。古い街が取り壊され、まったく新しい商業形態で有効利用されるエネルギーは、人びとの仕事、喜び、楽しみ、出会い、ふれあいといった都市生活への成熟した情熱と比例しながらのことであろう。
 この「アンデコール」の増築部分、「アデンダ」のファサードは5層の吹き抜けになり、その縦空間に柔らかな曲線を描いて立ちのぼる螺旋階段がある。コンテンポラリーアートの吉田和央の作品だが、鉄を素材としながら、あくまでも軽やかで柔らかな印象をと願い、時や言葉を越えて語りかける確かな存在感を期待した。狭い敷地なので、ファサードのこういった印象を中心にして、6店舗を新たにつけ加えた。