比叡山を分水嶺とする真野川が琵琶湖に注ぐ三角州のあたりに、この建物は立地している。びわ湖大橋の西詰に近く、都心から1時間の距離である。古くから、関西の人に親しまれている「真野浜」水泳場が北側に隣接している。このような立地条件のうえで、平常の都市でさまざまな過密さから離れた都市人に、自然を味わえる健康な場を提供することを目的としてこのプロジェクトははじめられた。
 この施設がメンバーシップのクラブハウスであれ、遊びの基地であれ、リゾートという概念では、まず、宿泊可能なことが大きな意味をもつ。日帰りであそべるし、一週間そこで過ごすのもよい、どちらでも可能という時間に対するキャパシテイの自由なイメージが、「遊び」生活では特に必要なことのはずだから。そのうえで、琵琶湖の水面を利用することを中心にした、あらゆる「遊び」がめざされ、発見されていけばいいのではないか。ただ、利用者は、都会生活者であり、ライフスタイル、リビングスタイルなどの感性にフィットした空間が要求されることは言うまでもなく、マーケテイングコンセプトとしては、ヨット、ボートセーリングなどの遊びを、メンバーシップのなかで提供する空間とした。
 設計のポイントとしては、光、風、太陽、緑などの自然の受容にたいして、どれだけインパクトのある仕掛けをつくれるかにある。盃状の平面をもつグリーンハウスをこの自然受容の象徴空間に据え、レストラン、ロビーなど高さの違うフロアを接合していくことによって空間の統合をはかっている。さらに「リブレ」が長年にわたって蓄積してきた、きめこまやかなオペレーションシステムを、どれだけ使いやすくここちよい状態に、機能化、建築化できるかを大切にしたつもりだ。
 利用されていくうちに、スポーツフィッシングのためのハイパワーなバスボートの所有者の利用が増していることが、特筆される。またオーナーサイドでは、自然をこわさずに、琵琶湖によりフィットする、浅い場所でも停泊可能な大型ヨットの導入にも力を入れはじめている。これが可能になれば、やっかいなハーバー工事が不必要になるから、画期的な需要を喚起できるだろう。大人の静かなレジャー基地がいきづき始めている。

リブレ
(マリーナクラブ)

商環境デザイン賞入選